「人手不足を解消するため、技能実習生の受け入れを検討しているが、何から手をつければ良いのか分からない」
「手続きが複雑で、配属までにどのくらいの時間がかかるのだろうか」
企業の経営者様や人事ご担当者様の中には、このような疑問やお悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。外国人材の受け入れは、多くの企業にとって未経験の領域であり、不安を感じるのは当然のことです。
しかし、ご安心ください。技能実習生の受け入れプロセスは、一見複雑に思えるかもしれませんが、全体の流れと各ステップでやるべきことを正しく理解すれば、計画的に、そしてスムーズに進めることが可能です。
この記事では、「技能実習生 受け入れ」を検討されているすべての企業様に向けて、お申し込みから実習生が企業に配属されるまでの全10ステップを、必要な期間や書類にも触れながら、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を最後までお読みいただければ、受け入れプロセス全体のロードマップが明確になり、今すぐ何をすべきかが見えてくるはずです。
技能実習生の受け入れプロセス全体の流れと期間
まず、全体像を把握することから始めましょう。技能実習生の受け入れを申し込んでから、実際に実習生が企業に配属されるまでの期間は、平均して6ヶ月から7ヶ月ほどかかります。
「思ったより長い」と感じられたかもしれません。この期間の多くは、海外での候補者募集や、日本の公的機関(外国人技能実習機構や出入国在留管理庁)への申請と審査に要する時間です。これらは法律で定められた手続きであるため、残念ながら大幅に短縮することはできません。だからこそ、余裕を持ったスケジュールで準備を開始することが、計画通りの人材確保を成功させる鍵となります。
以下に、お申し込みから配属までの大まかなタイムラインを示します。各ステップの詳細は、次の章で詳しくご説明します。
タイミング | ステップ | 主な内容 |
---|---|---|
入国前 約7ヶ月 | ステップ1・2 | 監理団体との契約、求人要件の確定 |
入国前 約6ヶ月 | ステップ3 | 候補者の募集と面接、採用者の決定 |
入国前 約4ヶ月 | ステップ4・5 | 技能実習計画の作成、OTITへの認定申請 |
入国前 約3ヶ月 | ステップ6 | 在留資格認定証明書(CoE)の交付申請 |
(CoE待機期間) | ステップ7 | 母国での出国前研修 |
入国前 約1ヶ月 | ステップ8 | ビザ(査証)の申請・取得 |
入国後 | ステップ9 | 来日、約1ヶ月間の入国後講習 |
(講習修了後) | ステップ10 | 企業へ配属、技能実習開始 |
【ステップ別】技能実習生の受け入れ手続き 全10工程を詳解
それでは、ここから各ステップの内容をより具体的に見ていきましょう。企業様が「いつ」「何を」すべきかをイメージしながらお読みください。
ステップ1:信頼できる監理団体との出会いと契約(入国前 約7ヶ月)
技能実習生の受け入れは、まず国から認可を受けた「監理団体」に相談し、契約を結ぶことから始まります。技能実習生の受け入れ方法には、企業が直接受け入れる「企業単独型」と、監理団体を通じて受け入れる「団体監理型」の2種類がありますが、全体の98%以上が「団体監理型」です。多くの中小企業様にとって、監理団体は不可欠なパートナーとなります。
監理団体は、海外の送出機関との連携、複雑な行政手続きの代行、実習生の入国後講習、そして配属後の企業への監査や実習生のサポートまで、受け入れプロセスの全般にわたって企業を支援する専門機関です。
どの監理団体を選ぶかによって、受け入れの成否が大きく左右されると言っても過言ではありません。法令を遵守していることはもちろん、サポート体制が充実しており、親身に相談に乗ってくれる、信頼できるパートナーを見つけることが最初の重要な一歩です。
ステップ2:求人要件の明確化と募集依頼(入国前 約7ヶ月)
監理団体との契約が完了したら、次にどのような人材を求めているのか、具体的な求人要件を固めていきます。監理団体と相談しながら、以下の項目を明確にしていきましょう。
■ 募集職種と作業内容:どの職種で、具体的にどのような作業を任せるのかを定義します。
■ 受け入れ人数:企業の常勤職員数によって、年間に受け入れられる人数には上限が定められています。自社の体制で無理なく指導できる人数を検討します。
■ 求めるスキルや経験:必要な技術レベルや、関連業務の経験の有無などを定めます。
■ 人物像:協調性や学習意欲など、どのような人柄の人材に来てほしいかを具体化します。
■ 配属時期:いつから実習を開始したいのか、希望時期を伝えます。
ここで定めた要件が、海外の送出機関に伝えられ、候補者募集の基準となります。ミスマッチを防ぎ、貴社に最適な人材を迎えるためにも、この段階で要件をしっかりと定義しておくことが非常に重要です。
ステップ3:候補者の選考と面接(入国前 約6ヶ月)
監理団体から海外の送出機関へ求人票が送られると、現地で候補者の募集が始まります。通常、求人数の3倍程度の候補者が集められ、その中から書類選考や一次面接を経て、企業様との最終面接に進む候補者が絞り込まれます。
面接の方法は、主に2つあります。
■ 現地面接:担当者様が現地に赴き、直接候補者と対面で面接します。人柄や雰囲気を肌で感じることができ、実技試験なども行いやすいのがメリットです。
■ オンライン面接:インターネットを通じて、日本からリモートで面接を行います。渡航コストや時間を削減できるのが大きなメリットです。
どちらの方法でも、監理団体のスタッフや通訳が同席し、円滑なコミュニケーションをサポートしますのでご安心ください。面接では、履歴書だけでは分からない学習意欲や人柄、日本で技術を学びたいという強い動機などをしっかりと見極め、採用者を決定します。採用が決まったら、候補者と雇用契約を締結します。
ステップ4:技能実習計画の作成と準備(行政手続きの開始)
採用者が決まったら、いよいよ日本側での行政手続きが本格的に始まります。その中心となるのが「技能実習計画」の作成です。
技能実習計画とは、「誰に」「どのような技術を」「どのように指導し」「どのような目標を達成させるか」を具体的に定めた、実習全体の設計図とも言える重要な書類です。この計画書は、監理団体の専門的な指導を受けながら、受け入れ企業様が作成します。
また、この計画を作成するにあたり、企業内での指導体制を整える必要があります。以下の3つの役割を、それぞれ常勤の役職員の中から選任することが法律で義務付けられています。
技能実習責任者
■ 技能実習全体の進捗を管理し、関連する全ての職員を監督する、いわば現場の総責任者です。
H4:技能実習指導員
■ 実習生に対し、実務の指導を直接行う担当者です。指導する技能について5年以上の実務経験があることが求められます。
生活指導員
■ 実習生の日本での生活全般をサポートする担当者です。ゴミ出しのルールや銀行口座の開設、病気になった際の病院への付き添いなど、仕事以外の面での相談役となります。
これらの体制を整え、実習内容を具体化した技能実習計画を作成することが、次のステップへの準備となります。
ステップ5:外国人技能実習機構(OTIT)への計画認定申請(入国前 約4ヶ月)
作成した技能実習計画は、「外国人技能実習機構(OTIT)」という専門機関に提出し、「この計画は適切である」という認定を受ける必要があります。これが、技能実習生の受け入れにおける最初の大きな行政手続きです。
申請書類の準備や提出は、監理団体が責任を持ってサポートします。審査には通常1〜2ヶ月程度の時間がかかります。この認定がなければ、次のステップに進むことはできません。
ステップ6:在留資格認定証明書(CoE)の交付申請(入国前 約3ヶ月)
技能実習計画が無事に認定されたら、次はその認定通知書を添付して、管轄の地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility, CoE)」の交付を申請します。
CoEは、その外国人が日本で行う活動(この場合は技能実習)に問題がなく、在留資格の条件に適合していることを法務大臣が証明する書類です。これがなければ、日本に入国するためのビザ(査証)を取得することができません。この申請手続きも、監理団体が主導して行います。交付までには、さらに1〜2ヶ月程度の期間を要します。
ステップ7:母国での出国前研修(CoE交付待機期間)
日本でCoEの審査が行われている間、採用が決まった実習生は母国で待機しているわけではありません。送出機関が運営する研修施設で、来日に向けた「出国前研修」を受けます。
この研修では、集中的な日本語教育はもちろんのこと、日本の文化や生活習慣、交通ルール、職場で使う専門用語の基礎などを学びます。この出国前研修が充実しているほど、来日後の日本社会や職場への適応がスムーズになります。実習生たちは、日本での生活を夢見ながら、日々熱心に学習に励んでいます。
ステップ8:日本大使館でのビザ(査証)申請(入国前 約1ヶ月)
出入国在留管理局からCoEが交付されたら、その原本を国際郵便で実習生がいる母国へ送付します。そして、実習生本人がそのCoEとパスポートなどの必要書類を持って、自国にある日本大使館または総領事館へ行き、ビザ(査証)を申請します。
この手続きは送出機関のスタッフがサポートします。通常、申請から1週間程度でビザが発給されます。このビザが発給されて初めて、来日のための航空券を手配し、具体的な入国日が確定します。
ステップ9:来日と入国後講習(入国後)
待ちに待った実習生が日本に到着します。しかし、空港から直接企業へ配属されるわけではありません。法律により、配属前に約1ヶ月間(160時間以上)、監理団体が用意する研修施設で「入国後講習」を受けることが義務付けられています。
この講習では、より実践的な日本語のトレーニングに加え、日本の労働関係法令、入管法、交通安全、防災、ゴミの分別といった生活ルールなど、日本で安全・安心に暮らしていくために不可欠な知識を学びます。この期間は、実習生が日本の生活リズムに慣れ、企業での実習にスムーズに移行するための重要な助走期間となります。
ステップ10:企業への配属と技能実習開始
約1ヶ月間の入国後講習を無事に修了し、いよいよ企業様への配属の日を迎えます。配属当日は、監理団体のスタッフも同行し、実習生が新しい環境に馴染めるようサポートします。
企業様には、改めて雇用条件の確認や、社会保険・雇用保険の加入手続き、安全衛生教育などを行っていただきます。そして、ここから最長3年間(優良認定企業の場合は5年間)にわたる技能実習が、本格的にスタートします。
技能実習生の受け入れ手続きにおける役割分担
これまでの10ステップを見ていただくと、多くの関係者が連携して手続きを進めていることがお分かりいただけたかと思います。ここで、改めて「受け入れ企業」「監理団体」「送出機関」の主な役割を整理してみましょう。
役割 | 主な担当業務 |
---|---|
受け入れ企業様 | ■ 求人要件の決定 ■ 候補者の面接・採用 ■ 技能実習計画の作成(監理団体の支援あり) ■ 社内担当者(責任者、指導員、生活指導員)の選任 ■ 宿舎など生活環境の準備 ■ 配属後の技能実習の実施と指導 ■ 技能実習日誌の作成 |
監理団体 | ■ 受け入れに関するコンサルティング ■ 送出機関との連携・求人依頼 ■ 面接の調整・サポート ■ 技能実習計画作成の指導 ■ OTITへの計画認定申請 ■ 出入国在留管理局へのCoE申請 ■ 入国後講習の実施 ■ 配属後の定期的な監査・巡回指導 ■ 実習生からの相談対応 |
送出機関(海外) | ■ 候補者の募集・一次選考 ■ 面接のセッティング ■ 採用者との雇用契約手続きサポート ■ 出国前研修の実施 ■ 現地でのビザ申請サポート ■ 出国手続きの支援 |
このように、企業様が直接行う必要があるのは、主に「どのような人材が欲しいかを決め、採用し、実習を行う」という本質的な部分です。複雑な行政手続きや海外とのやり取りの大部分は、監理団体が専門家としてサポートしますので、初めての受け入れでもご安心いただけます。
技能実習生の受け入れで必要となる主な書類
技能実習生の受け入れでは、非常に多くの書類を作成・提出する必要があります。すべてをここで挙げることはできませんが、代表的なものとしては以下のような書類があります。
■ 技能実習計画認定申請書
■ 申請者の登記事項証明書や決算報告書
■ 技能実習責任者・指導員・生活指導員の履歴書、就任承諾書
■ 技能実習生の履歴書、パスポートの写し
■ 雇用契約書、雇用条件書
■ 在留資格認定証明書交付申請書
これらの書類は、一つでも不備があると手続きが滞ってしまいます。しかし、これらの書類作成も監理団体が書式や記入例を用意し、丁寧にサポートしますので、心配はご無用です。
まとめ:計画的な準備でスムーズな技能実習生の受け入れを実現しましょう
今回は、技能実習生の受け入れについて、お申し込みから配属までの流れを10のステップに分けて詳しく解説しました。
全体のプロセスには約6〜7ヶ月という期間が必要であり、多くの手続きを踏む必要があります。しかし、各ステップでやるべきことを理解し、信頼できる監理団体というパートナーと共に計画的に準備を進めることで、技能実習生の受け入れは決して難しいものではありません。
熱意あふれる若い人材が、貴社の技術を学び、職場の活性化に貢献してくれる。技能実習制度は、深刻な人手不足に悩む多くの企業にとって、未来を切り拓く大きな力となる可能性を秘めています。
技能実習生の受け入れは、多くの手続きと時間を要しますが、計画的に進めることで、貴社の未来を担う貴重な人材を迎えることができます。制度に関するご不明点や、具体的な受け入れ計画のご相談など、どんな些細なことでも構いません。外国人技能実習生の受け入れに関してのお問い合わせは、豊富な実績を持つ桐蔭事業協同組合まで、お気軽にご連絡ください。