技能実習生の受け入れで「失敗」する7つの理由とは?失踪や労基法違反を防ぐ企業の対策5選を徹底解説

この度は、外国人技能実習生の受け入れをご検討いただき、誠にありがとうございます。あるいは、すでに受け入れを開始され、日々の運営にご尽力されていることと存じます。

「技能実習生, 受け入れ」と情報を探される企業様の多くが、人手不足の解消や職場の活性化といった期待と同時に、「文化や言語の壁は大丈夫だろうか」「万が一、失踪などのトラブルが起きたらどうしよう」といったご不安をお持ちではないでしょうか。

技能実習制度は、適切に運用すれば企業様と実習生双方にとって大きなメリットをもたらす素晴らしい制度です。しかし、残念ながら一部の企業では、意図せず法令違反を犯してしまったり、深刻なトラブルに発展してしまったりするケースも報告されています。

この記事では、技能実習生の受け入れで起こりがちな「7つの失敗」と、その根本原因を分析し、企業様が今すぐ実践できる「5つの具体的な対策」を、丁寧にご説明いたします。

技能実習生の受け入れにおける7つの主な失敗例

まず、厚生労働省の監督指導結果(令和4年)によれば、調査対象となった事業場のうち73.3%もの事業場で、労働基準関係の法令違反が確認されています。決して他人事ではなく、誰でも陥る可能性のある「失敗」としてご覧ください。

受け入れ企業様が直面しがちな「失敗」を、7つの類型に分けてご説明いたします。

失敗例 具体的な内容 企業が負うリスク
1. 賃金・残業代の未払い 最低賃金や地域の基準を守らない、割増賃金(残業代)を正しく計算・支払わないケースです。「実習生だから」という誤った認識が原因の場合があります。 労働基準法違反、失踪の直接的要因
2. 違法な長時間労働 36協定を適切に締結・届出せず、法定の上限(原則月45時間)を超える残業を強いるケースです。人手不足のしわ寄せが実習生に集中しがちです。 労働基準法違反、実習生の健康被害
3. ハラスメントと人権侵害 言葉の壁による苛立ちから、暴言や暴力、または無視するといったパワーハラスメントが発生するケースです。パスポートの取り上げなども深刻な人権侵害です。 人権侵害、失踪の直接的要因、犯罪行為
4. 労働災害と安全不備 危険な作業の指示や安全標識の意味が、言語の壁によって正確に伝わらないまま作業させ、事故に至るケースです。安全教育の不足が原因です。 労働安全衛生法違反、企業の安全配慮義務違反
5. 実習生の「孤立」 職場で誰も相談相手がおらず、悩みを抱え込んでしまう状態です。日本人従業員とのコミュニケーション不足が大きな原因となります。 精神的不調、モチベーション低下、失踪
6. 劣悪な環境による「失踪」 上記1~5のような問題が重なり、「助けてくれる人はいない」と絶望した実習生が失踪するケースです。多くの場合、実習生が来日時に背負った高額な借金も背景にあります。 受け入れ停止ペナルティ(後述)
7. 監理団体の機能不全 パートナーであるべき監理団体が、訪問監査を形式的に済ませたり、実習生からの相談に「我慢して」と取り合わなかったりするケースです。 問題の早期発見ができず、事態が悪化

失敗例の深掘り(1):賃金・残業代の未払い

上記の中でも「割増賃金の支払」に関する違反は、令和4年度の調査で16.5%(1,708事業場)と、非常に高い割合で指摘されています。これは「うっかりミス」では済まされない問題です。「実習生だから、このくらいで良いだろう」という誤った認識や、給与計算の仕組みが複雑で対応できていないケースが見受けられます。しかし、実習生はSNSなどを通じて他社の実習生や日本の最低賃金情報を正確に把握しています。賃金への不信感は、即座に労働意欲の低下と失踪のリスクに直結します。

失敗例の深掘り(2):違法な長時間労働

人手不足が深刻な現場ほど、実習生に過度な負担がかかりがちです。労働基準法で定められた上限(原則月45時間、年360時間)を超える労働はもちろん、36協定を適切に締結・届出しないまま残業させることは重大な法令違反です。中には、月100時間を超える違法な時間外労働を行わせていた事例も報告されています。企業様には、国籍を問わず全従業員の労働時間を適正に管理する義務があります。

失敗例の深掘り(3):ハラスメントと人権侵害

言葉の壁や文化の違いからくるコミュニケーションエラーが、指導者のいら立ちを招き、暴言や暴力といったパワーハラスメントに発展するケースは後を絶ちません。「指導」という名の元に行われるいじめや無視も、実習生の尊厳を深く傷つけます。また、自由を奪うためにパスポートや在留カードを取り上げる行為は、重大な人権侵害であり、犯罪行為です。労災隠しのために病院に行かせないといった行為も同様です。

失敗例の深掘り(4):背景にある「多額の借金」と「失踪」

失踪の背景には、多くの場合、実習生が来日時に背負った「多額の借金」が存在します。自国の送り出し機関に平均50万円以上、時には100万円を超える手数料を支払うため借金をしているケースがあり、この返済プレッシャーが彼らを心理的に縛り付けます。その結果、低賃金や劣悪な労働環境であっても「借金を返すまでは辞められない」と我慢を強いられ、不当な要求を拒否できない状況に追い込まれます。そして、その我慢が限界に達した時、「助けてくれる人は誰もいない」という孤立感と絶望から、失踪という最終手段を選んでしまうのです。

技能実習生の「失踪」が企業に与える深刻なペナルティ

上記の失敗例の中でも、特に「失踪」は、企業様にとって最も避けたい事態の一つです。失踪は、実習生本人の問題だけでなく、受け入れ企業側の労働環境やマネジメント体制に根本的な原因がある場合がほとんどです。

実習生が失踪し、その原因が企業側にあると判断された場合、以下のような深刻なペナルティが科される可能性があります。

1. 新規受け入れの停止処分
実習生の失踪が発生し、その原因が企業側(例:各種の法令違反行為や人権侵害行為など)にあると判断された場合、技能実習生の新規の受け入れが停止される可能性があります。

2. 「特定技能」人材の受け入れへの悪影響
企業の責めに帰すべき事由による失踪は、将来的に「特定技能」の外国人材を受け入れる際の要件(「1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと」)に抵触し、受け入れができなくなる可能性があります。

失敗の根本原因:制度と実態の「3つのズレ」

これらの失敗は、なぜ起きてしまうのでしょうか。背景には、企業様と実習生の間に生じる「3つのズレ」があると考えられます。

原因1:「労働力」としての期待と「技能移転」という目的のズレ
制度の本来の目的は「国際貢献」と「技術移転」です。しかし、実態として国内の人手不足を補う「安価な労働力」としてのみ捉えてしまうと、待遇への不満やモチベーション低下を招き、認識のズレが生まれます。

原因2:初期コスト意識と「人財」育成のズレ
技能実習生の受け入れには、初期コストや教育コストがかかります。これを単なる「費用」と捉え、安全教育や住環境の整備(例:劣悪な寮環境)を軽視してしまうと、実習生の不満や労働災害の引き金となります。

原因3:言葉の壁を「個人の努力」の問題と捉えるズレ
「日本語が伝わらない」ことを実習生側の努力不足と誤解し、指導者が苛立ち、コミュニケーションを諦めてしまうケースです。本来は、企業側が「分かりやすく伝える工夫」をする必要があります。

技能実習生の受け入れ失敗を防ぐ!企業が今すぐ実践すべき5つの対策

では、どうすればこれらの失敗を防ぎ、実習生と良好な関係を築けるのでしょうか。企業様が今すぐ実践すべき5つの対策を、より具体的にご紹介します。これらはすべて、実習生の「孤立」を防ぎ、「信頼関係」を築くためのものです。

対策1:信頼できる「監理団体」を選ぶ

技能実習生の受け入れ成功は、パートナーとなる「監理団体」選びで決まると言っても過言ではありません。監理団体は、企業様と実習生をつなぐ公式パートナーであり、法令遵守の指導や実習生のサポートを担う重要な存在です。

監理費用の安さだけで選ぶのではなく、以下の点を確認することが重要です。

・法令遵守を徹底し、企業への指導・監査が厳格かつ丁寧であること。
・実習生へのサポート体制(母国語での相談対応など)が充実していること。
・監理費用の内訳が明確であること。

残念ながら、中には監査を形式的に済ませたり、企業の不正行為を見て見ぬふりをしたりする団体も存在します。実習生が相談しても「もう少し我慢して」と取り合わず、企業側の代弁者となってしまうような団体では、問題の早期発見は不可能です。誠実で、厳しくとも正しい指導をしてくれるパートナーを選定することが、結果的に企業様自身を守ることにつながります。

対策2:労働関連法規の遵守と労働環境の整備

これは対策以前の「義務」ですが、改めて徹底することが最大の失敗防止策となります。技能実習生も、国籍を問わず日本の労働関連法規(労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法)によって守られた「労働者」です。

・最低賃金以上の賃金支払い(日本人と同等以上の報酬)。
・36協定の適切な締結・届出と、残業代(割増賃金)の漏れのない支払い。
・賃金明細の母国語または「やさしい日本語」での提供。
・安全装置の使用方法など、安全衛生教育の徹底。

特に重要な住環境(寮)の整備:失踪を防ぐ第一歩

労働環境の中でも、特に「住環境(寮)」の整備は、実習生の生活の質と精神的安定に直結する重要なポイントです。劣悪な寮環境は、失踪の引き金となり得ます。

・広さの基準:法律により、1人あたりの居住スペース(寝室)として「4.5平方メートル以上」を確保する必要があります。ダイニングやトイレ、風呂などはこの面積に含めません。

・家賃の相場:実習生から徴収できる家賃は、実費を超えない範囲で地域によって異なりますが、一人あたり1~3万円程度、給与の15%以下が目安となり、残りは企業様負担となります。

・徴収できない費用:敷金、礼金、契約更新料、火災保険料などは企業様が負担し、実習生から徴収することはできません。

・必須の設備・備品:実習生はスーツケース一つで来日します。配属当日から不自由なく生活できるよう、以下の備品は最低限用意する必要があります。

カテゴリ 必須の備品リスト
主要設備 エアコン(冷暖房)、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、炊飯器、ガスコンロ、電子レンジ、セキュリティーボックス
寝具・家具 布団一式(夏・冬用)、テーブル、食器棚、カーテン
生活用品 炊事道具一式、食器類一式、掃除道具一式、洗濯道具一式、ゴミ分別用のゴミ箱
通信環境 Wi-Fi環境(※非常に重要)

特に「Wi-Fi」は、母国の家族との連絡や、監理団体・企業からの連絡手段(SNSなど)として不可欠なインフラです。Wi-Fiがないことは、実習生を社会的に孤立させる要因となります。月々の通信費は実費を人数割りで徴収可能ですので、必ず設置をお願いいたします。どうか、「日本人従業員と同等の社員寮」をご提供いただくよう、ご配慮をお願いいたします。

対策3:積極的なコミュニケーションで「孤立」を防ぐ

失踪の最大の引き金は「孤立と絶望」です。実習生が「この職場は誰も助けてくれない」と感じないよう、積極的なコミュニケーションが不可欠です。

・定期的な面談(月1回以上)や食事会などを実施し、悩みを把握する。
・年齢や立場の近い日本人従業員を「メンター(お世話係)」として付け、日常の悩みや生活のルール(ゴミ出しの方法など)を気軽に相談できる仕組みを作ります。これはメンター役の日本人社員の成長にも繋がります。
・歓迎会や地域のイベントへの参加を促し、業務外での交流機会を設け、職場全体で受け入れる雰囲気を作ることが大切です。

対策4:日本語教育と「異文化理解」の機会を提供する

言葉の壁は、実習生側だけの問題ではありません。企業側(日本人従業員)も「一緒に学ぶ」姿勢が重要です。

・業務の専門用語や、日本独特の「報・連・相」(報告・連絡・相談)の仕方も丁寧に指導します。
・外部の日本語教室の費用補助なども、実習生の意欲向上に有効な投資です。
・【重要】日本人従業員も、実習生の国の文化、宗教、食習慣(例:イスラム教徒のハラールや礼拝など)を学ぶ「異文化理解研修」を実施し、「違い」を「間違い」と捉えず、互いに敬意を払う職場風土を作ることが、ハラスメント防止の根本対策となります。

対策5:母国語対応の相談窓口を設置し、頼れる体制を作る

直属の上司には言いにくい悩みもキャッチできる仕組みが、問題を早期に解決し、失踪を防ぎます。

・人事部や総務部、または信頼できる特定の従業員(メンター)など、複数の相談ルートを用意します。
・無記名で投函できる「母国語表記の意見箱」を設置することも有効です。人目を避ける場所に設置し、定期的に内容を確認・対応することで、直接は言いにくい本音を吸い上げることができます。
・社内だけでなく、中立的な第三者に頼れるという安心感を与えるため、外国人技能実習機構(OTIT)や地域の労働基準監督署、法務局(人権相談)といった公的相談機関の連絡先をリストにして渡しておきましょう。これは、企業様が法令を遵守しているという透明性の証にもなります。

まとめ:技能実習生の受け入れは「準備」と「パートナー選び」で決まります

技能実習生の受け入れは、単なる「人手不足の解消」ではなく、異なる文化を持つ人財を受け入れ、共に成長していく「未来への投資」です。失敗事例の多くは、事前の準備不足やコミュニケーションの欠如、そして法令に対する誤解から生じています。

本日ご紹介した7つの失敗事例を「他山の石」とし、5つの対策、特に「信頼できる監理団体選び」「法令遵守と寮を含む労働環境の整備」「双方向のコミュニケーション」を実践することで、技能実習生の受け入れは企業にとって大きなプラスとなります。信頼できるパートナー(監理団体)と二人三脚で、法令を遵守し、実習生を「家族」や「仲間」として温かく迎え入れる体制を整えることが、成功への一番の近道です。

外国人技能実習生の受け入れに関してのご相談やお悩みは、桐蔭事業協同組合までお気軽にご連絡ください。制度を熟知した専門スタッフが、企業様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。まずはお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

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